酪農の態勢をトレンドとして見て、それを基礎に未来を予測する
酪農家戸数、乳牛頭数、1戸当たり飼養頭数、1頭当たり乳量、国内の牛乳生産量、100頭以上飼養経営の戸数シェア、100頭以上飼養経営の頭数シェアの現状と予測を行った。
このままのトレンドで何も対策をとらない・無策のままだと、平成28年には、酪農家戸数:2万1000戸、乳牛頭数:128.3万頭、1戸当たり飼養頭数:81頭、1頭当たり乳量:8837kg、国内の牛乳生産量:657万t、100頭以上飼養経営の戸数シェア:12.9%(二次曲線)、8.9%(ロジステック曲線)、100頭以上飼養経営の頭数シェア:51.1%(二次曲線)、46.6%(ロジステック曲線)となっていきそうだ。これらをどこで落ちつかせるかが課題だろう。また、酪農の担い手について検討すると、現在経営主年齢が60歳・55歳前後の経営にて移譲がなされている時代である。またこの層では、後継者の有無が存続上大きな問題となっており、45歳前後の後継した経営においても、将来子どもたちに跡継ぎをさせるべきか否かを悩んでいる人が多い。経営継続および跡継ぎを逡巡させる要因として、「農業経営費の増加に対して農業所得が追いついていかない」「酪農を取り巻く社会・経済的な地位と展望の問題」「生活の問題」などが考えられる。
また、地方都市近郊の酪農家を調査した結果を示し、飼養頭数58頭(搾乳牛33頭)の経営で平成16年7月の1日当たりの飼料費合計で2万7198円(年間約993万円)と乳飼比33.2%であったものが、平成19年3月には、1日当たりの飼料費合計で3万3964円(年間約1240万円)と乳飼比44.6%に上昇した。
この酪農家夫妻との座談では、「この地区は開拓入植地域であり、昔は皆、牛を飼っていた。現在住宅地として分譲され、1戸だけになった。現状では規模拡大はできず、現状維持よっては縮小も考えなければならない。妻は『頭数を減らしても効率の良い酪農を』と考えコンピューター簿記で経営管理を行っている。サラリーマンのように定年退職ということだって考えられる。また、酪農を志す人が誰でもできる状況にしなければならないと考えており、実習生の受け入れを行っている」と。
酪農家は日本の食料生産、とくに飲用乳の生産を担っているという自負を持つことが重要である
現在、飼養戸数・頭数の減少、減産・低乳価の時代に直面しており、酪農家のパワーが減衰している。しかし新しいうねりとして、「通称メガファームとしわれる雇用を前提とした酪農業の拡大」「コントラクターによる作業のアウトソーシング化」「TMRセンターの増加」「イネ発酵飼料、水田型酪農の推進」「北海道に建設中のチーズ工場により刺激される生産意欲」があげられる。
これからの酪農経営として、衰退しているからこそ「目指すべきこと・理念」をしっかり持つ必要があり、酪農家は日本の食料生産、とくに飲用乳の生産を担っているという自負を持つことが重要である。生活の豊かさの目標を設定し、牛を健康に飼い、可処分所得を高めること、また地域社会の活性化を図るために、周辺住民との融和、ふれあい牧場の実施、生産物の提供、環境保全への努力、地域産業コンプレックスの一員としての持続的な農業の推進、地域協業などが考えられる。他にも高いポテンシャルを秘めている未利用飼料資源の高度利用を行うために工業社会との連携も戦術的に行っていき、土―草―家畜の基本理念を再認識する必要がある。
これからの飼料業界は、酪農家グループが法人化し、行政からの支援を受けた上で、TMRセンターの開設が進んでおり、この中へのコミットが必要であろう。地域TMRセンターの構成メンバーになり、原料の供給、製品の設計、給与の指導に参加して、TMRセンター経営の中で一定の地位を占めていくであろう。また、地域の飼料ストックポイントを酪農協と連携してその利用度を拡大する。そこでは、ウェットあるいはドライのTMRを個別農家ごとに調製し、配送するという手法。この場合には地域の食品製造業での副産物の量と品質についてのウォッチと連携が功を奏する。また、地域の粗飼料コントラクターとの連携、総体としての飼料総合商社的な発想が望まれる。
技術普及部門では、技術コンサルテーションを強化し、酪農家を支援してほしい。飼料メーカーが持っているロジステックス(物資の供給と配送の統合)、つまり支援活動をより広範囲に、情勢の変化を的確に捉えながら展開することが打開策であろう。原材料や供給先の計画、開発、管理、保管、移動、加工品の設計、酪農家への配送などのノウハウを新たな酪農の展開に生かすことが飼料メーカーの責任でもある。「濃厚飼料と粗飼料を分けて考えてはいけない」ということを念頭におき、製造した配合飼料を効率的に活かすための粗飼料も含め、統合して『飼料』として酪農家の面倒をみていただきたい。
最後に阿部氏は、「酪農家を商売の相手としてみるのではなく、パートナーとして位置づけてほしい」と述べた。